3GPPにおけるNTNに関する各Releaseでの合意事項と議論内容の概要:SA/RAN/CT

1. はじめに

第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)は、モバイル通信プロトコルの開発を行う複数の標準化機関をまとめる包括的な用語です [source: 17]。その活動は、組織パートナーと市場表現パートナーによって支えられています [source: 17]。3GPPの作業は、無線アクセスネットワーク(RAN)、サービスとシステムアスペクト(SA)、コアネットワークと端末(CT)という3つの主要なストリームに組織されています [source: 17]。3GPPの標準はリリースとして構造化されており、各リリースには多数の技術仕様と技術レポートが含まれています [source: 17]

非地上系ネットワーク(NTN)は、通常8〜50kmの高度で運用される無人航空機システム(UAS)、高高度プラットフォーム(HAP)、または様々な構成の衛星を使用して、伝送機器の中継ノードまたは基地局を搭載するネットワークまたはネットワークセグメントです [source: 7]。衛星軌道には、低軌道(LEO)、中軌道(MEO)、静止軌道(GEO)、高楕円軌道(HEO)などがあります [source: 7]。NTNは、地上ネットワークが利用できない地域への接続を提供し、サービスの継続性を高め、ネットワークの回復力を向上させる上で重要な役割を果たします [source: 4]

本レポートの目的は、3GPPにおけるNTNに関連する主要な合意事項と議論の内容を、各リリースごとに、SA、RAN、CTの各技術仕様グループ(TSG)に焦点を当てて詳細にまとめることです。

2. 3GPP技術仕様グループ(TSG)とNTN標準化の概要

NTNの標準化において中心的な役割を果たす各TSGの責任範囲と重点分野は以下の通りです [source: 17]

SA(サービスとシステムアスペクト)

3GPPシステムのサービス要件と全体的なアーキテクチャを規定し、プロジェクト全体の調整を行います [source: 17]。NTNにおいては、サービスレベルの要件定義、アーキテクチャの検討、管理・運用に関する検討などを担当します。

RAN(無線アクセスネットワーク)

無線インターフェースとプロトコルを担当し、UEとネットワーク間のエアインターフェースを規定します [source: 17]。NTNにおいては、物理層、データリンク層、ネットワーク層における無線アクセス技術の仕様、無線リソース管理、RF性能などを担当します。

CT(コアネットワークと端末)

3GPPのコアネットワークと端末部分を規定し、コアネットワークプロトコルを含みます [source: 17]。NTNにおいては、モビリティ管理、セッション管理、ネットワーク選択、端末の動作などを担当します。

NTNは、従来の地上ネットワーク(TN)と比較して、以下のような特有の技術的課題を提示します [source: 3]

3. 3GPPリリースごとのNTN標準化の進捗

3.1. リリース14-16:基礎研究

リリース14

3GPPは、衛星および非地上ネットワークを介した地上ネットワークの拡張に関するユースケースと要件の研究を含む検討を開始しました [source: 7]。これは、NTNの可能性と標準化の必要性が初期段階で認識されていたことを示しています。

リリース15

最初の5Gの規範的要件を標準化したリリースであり、主に地上ネットワークに焦点が当てられました [source: 7]。RAN主導のスタディアイテム(SI)「非地上ネットワークをサポートするためのNRの研究」(FS_NR_nonterr_nw)が開始され、TR 38.811が作成されました [source: 7]。この研究は、ユースケースの概要、NTN用の3GPPチャネルモデルの適応、および展開シナリオの説明に焦点を当てました [source: 7]。リリース15は、無線アクセスドメイン内でのNTN研究の正式な開始を示しています。

リリース16

SAおよびRAN全体で、さらなるスタディアイテムが継続されました [source: 7]。SAでは、SA1 SI「5Gにおける衛星アクセス利用の研究」(FS_5GSAT)により、ユースケースと潜在的なステージ1要件を分析したTR 22.822が作成されました [source: 7]。RANでは、RAN3主導のSI「非地上ネットワーク(NTN)をサポートするためのNRのソリューションの研究」(FS_NR_NTN_solutions)により、主に透過的なGEOおよびLEOペイロードを使用した衛星アクセスに関するRANプロトコル/アーキテクチャへの影響に焦点を当てたTR 38.821が作成されました [source: 7]。リリース16の会議と並行して、再生型ペイロードアーキテクチャに関する議論が始まりました [source: 12]。リリース16では、NTNの調査範囲が広がり、サービスとシステムのアスペクトも含まれるようになり、より詳細なRANレベルの分析が行われました。

3.2. リリース17:NTNに関する最初の規範的作業

SA(サービスとシステムアスペクト) [source: 7]

SA1(サービス要件) [source: 7]

WI「5GSATのステージ1」(5GSAT)は、リリース16の調査結果をTS 22.261のステージ1要件に変換しました [source: 7]。これには、サービス継続性、ローミング、ネットワーク選択、モビリティ、様々なサービス(低電力MIoTを含む)の衛星アクセス、遅延処理、衛星間リンク、QoS管理、マルチコネクティビティ、コンテンツ配信最適化、リレーUE、マルチキャスト/ブロードキャスト、NG-RAN共有、UE測位、および規制関連の側面に関する要件が含まれていました [source: 7]。リリース17は、NTNのサービスレベル要件の最初の規範的な仕様であり、商用化に向けた重要な一歩を示しています。

SA2(システムアーキテクチャ) [source: 7]

SI「5Gにおける衛星アクセス利用のアーキテクチャ側面に関する研究」(FS_5GSAT_ARCH)は、主要な課題とソリューションを特定しました [source: 7]。課題には、ローミング、衛星バックホール、大規模および移動する衛星カバレッジエリアでのモビリティ管理、遅延とQoSの考慮事項、NGSO再生型ベースの衛星アクセスによるRANモビリティ、およびマルチコネクティビティシナリオが含まれていました [source: 7]。WI「5GSAT_ARCH」における規範的なステージ2の作業により、透過的なペイロードベースのLEOおよびGEOシナリオ、UEの位置認識、および地球固定トラッキングエリアに焦点を当てたTS 23.501、TS 23.502、およびTS 23.503の更新が行われました [source: 7]。SA2は、NTNを5Gコアネットワークに統合するためのアーキテクチャの基礎を築きました。

SA5(管理とオーケストレーション) [source: 7]

SI「5Gネットワークにおける統合衛星コンポーネントによる管理とオーケストレーションの側面に関する研究」(FS_5GSAT_MO)は、参照管理アーキテクチャ、ユースケース、潜在的な要件、およびソリューションを分析しました [source: 7]。移動する非地上gNB用のSONコンセプトの特定/拡張、パフォーマンス測定の適応、5Gネットワークリソースモデル(NRM)の拡張、および地上RANと非地上RAN間の負荷分散アプローチの特定が推奨されました [source: 7]。SA5の作業は、NTNを既存のネットワーク管理フレームワークに効果的に統合し、管理できるようにすることを保証します。

RAN(無線アクセスネットワーク) [source: 7]

WI「非地上ネットワーク(NTN)をサポートするためのNRのソリューション」(NR_NTN_solutions)は、透過的なペイロードとFR1におけるFDDに焦点を当て、TS 38.101-5/TS 38.108に新しいバンドn255(Lバンド)とn256(Sバンド)をもたらしました [source: 7]。電力クラス3のハンドヘルドデバイスとGNSS機能を備えたUEがサポートされました [source: 7]。HAPS運用については、NR動作バンドn1を追加の変更なしに適用できることが結論付けられました [source: 7]。RANの規範的な作業により、NRを使用した直接衛星アクセスが現実のものとなりました。

RAN1(物理層) [source: 7]

タイミング、同期、およびHARQの機能拡張が行われました [source: 7]。ネットワークは、エフェメリス情報と共通のタイミングアドバンス(共通TA)パラメータをブロードキャストします [source: 7]。UEは、GNSS位置と衛星エフェメリスを使用して、タイミングアドバンスとドップラーシフトを自律的に事前補償します [source: 7]。共通TAとスケジューリングオフセットを使用して、いくつかのタイミング関係が拡張されました [source: 7]。HARQフィードバックを無効にするか、HARQプロセスの数を増やすことで、失速を軽減できました [source: 7]。RAN1におけるこれらの機能拡張は、NTNによってもたらされる物理層の課題に対処するために不可欠でした。

RAN2(レイヤー2および3) [source: 7]

モビリティ管理が強化されました [source: 7]。ハンドオーバーコマンドに衛星エフェメリスが提供され、UEはNTNと地上ネットワーク間のモビリティをサポートします [source: 4]。条件付きハンドオーバー(CHO)の新しいトリガー条件(イベントA4、時間ベース、および位置ベース)が導入されました [source: 7]。ネットワークは、複数のSS/PBCHブロック測定タイミング構成(SMTC)を並行して構成できます [source: 7]。ネットワークまたはUE制御に基づいてSMTCの調整が可能です [source: 7]。準地球固定セルシナリオは、アイドル/非アクティブモードでの時間ベースおよび位置ベースの測定をサポートします [source: 7]。NR NTNセルで、PLMNごとに複数のトラッキングエリアコード(TAC)をブロードキャストできます [source: 7]。UEは、粗い位置情報をNG-RANに報告できます [source: 7]。RAN2におけるこれらの機能拡張は、地上ネットワークと非地上ネットワーク間のシームレスなモビリティを可能にするために不可欠です。

RAN3(無線アクセスネットワークインターフェースとプロトコル) [source: 7]

主に透過的なペイロードを備えたGEOベースの衛星アクセスと、透過的または再生型ペイロードを備えたLEOベースの衛星アクセスに焦点が当てられました [source: 7]。主にNGSO向けのサービスリンクとフィーダーリンクの切り替え手順が議論されました [source: 7]。マップされたセルIDの使用やTACおよびTAIの報告など、NG-RANシグナリングの側面が取り上げられました [source: 7]。UEの位置に基づくgNBによるAMFの再選択が検討されました [source: 7]。エフェメリス情報やゲートウェイの場所など、NTN関連パラメータのO&M要件が定義されました [source: 7]。RAN3の作業は、無線アクセスネットワークとコアネットワーク間のスムーズな相互作用を保証します。

RAN4(無線性能とシステムアスペクト) [source: 7]

共存研究に基づいて、衛星アクセス運用をサポートするNRユーザー機器(UE)およびNR衛星アクセスノード(SAN)のFR1における最小RFおよび性能要件がTS 38.101-5およびTS 38.108で定義されました [source: 7]。RAN4の作業は、NTNリンクの品質と信頼性を保証するために不可欠です。

RAN5(モバイル端末適合性試験) [source: 7]

WI「NR_NTN_solutions_plus_CT-UEConTest」は、RAN2およびCT WGによって導入された機能のUEテストを実施しました [source: 7]。適合性試験は、UEが3GPP仕様に準拠していることを保証し、NTNデバイスの相互運用性と品質を促進します。

CT(コアネットワークと端末) [source: 7]

CT WGの関連するステージ3の作業は、REL-17 WI「5GSAT_ARCH-CT」で実施されました [source: 7]。これには、衛星アクセス用のPLMN選択を研究したTR 24.821が含まれていました [source: 7]。UEの位置の決定、共有/グローバルPLMN [source: 20] IDの処理、および衛星アクセス用のPLMN検索などの課題に対処しました [source: 26]。異なるMCCとグローバル/共有PLMN IDを持つシナリオが検討されました [source: 25]。UEが物理的に位置する国のPLMNのコアネットワークの使用を強制する必要性について議論されました [source: 25]。国際エリアでPLMNを選択するための手順が定義されました [source: 28]。CTの作業は、NTNをサポートするために必要なコアネットワークの側面、特に非地上環境におけるPLMN選択の複雑さに対処することに焦点を当てました。

3.3. リリース18:NTNの機能拡張と新機能

SA(サービスとシステムアスペクト) [source: 7]

SA1

WI「5GSATB(5GSにおける衛星バックホール)のステージ1」は、衛星を5Gシステムのトランスポート/バックホールとして使用する場合のQoS制御と課金に関する要件をTS 22.261に追加しました [source: 7]

SA2

SI「5GSにおける衛星バックホールのサポートに関する研究」(FS_5GSATB)は、動的衛星バックホール、衛星エッジコンピューティング、および衛星搭載のUPFを介したローカルデータスイッチングのソリューションについて議論しました [source: 7]。対応する規範的な作業(「5GSATBのステージ2」)は、TS 23.501、TS 23.502、およびTS 23.503におけるアーキテクチャ、手順、およびポリシーの機能拡張を対象としていました [source: 7]

SA3

SI「衛星アクセスのセキュリティ側面に関する研究」(FS_5GSAT_Sec)は、衛星カバレッジ情報がO&MによってのみAMFにプロビジョニングされ、AF承認に関する規範的な作業は不要であると結論付けました [source: 7]

SA5

SI「5GSにおける衛星の課金側面に関する研究」(FS_5GSAT_CH)および「IoT NTNの管理側面に関する研究」(FS_IoT_NTN)は、衛星アクセス、衛星バックホール、衛星バックホールによるエッジコンピューティングの加入者およびプロバイダー間の課金、衛星を介したSSC間通信の課金、およびIoT NTNの管理側面について研究しました [source: 6]。規範的な作業は、「5GSATの課金側面」および「5GSにおける衛星バックホールの課金側面」で続きました [source: 7]

RAN(無線アクセスネットワーク) [source: 7]

RAN2

WI「NR NTN(非地上ネットワーク)の機能拡張」(NR_NTN_enh)は、以前のリリースからのNTN機能を強化することを目的とし、カバレッジ拡張、ネットワーク検証UE位置、NTN-TNおよびNTN-NTNモビリティとサービス継続性の機能拡張、および10 GHzを超えるバンドでのNR-NTN展開に焦点を当てました [source: 7]。WI「IoT(インターネットオブシングス)NTN(非地上ネットワーク)の機能拡張」(IoT_NTN_enh)は、IoT NTNのパフォーマンス、測定とモビリティの機能拡張、不連続カバレッジの機能拡張、およびRRMの機能拡張に焦点を当てました [source: 7]

RAN4

WI「FR1(周波数範囲1)におけるNR NTN(非地上ネットワーク)用の30 MHzチャネル帯域幅」(NR_NTN_CBW_30MHz-Core)は、特定のNR NTNバンドに30 MHzのチャネル帯域幅を追加しました [source: 7]。WI「NR用の衛星L-/Sバンドの導入」(NR_NTN_LSband)は、新しいFDD NTNバンド(n254)を指定しました [source: 7]。WI「IoT NTN用の拡張Lバンドの導入」(IoT_NTN_extLband)および「IoT NTN運用用のFDD LTEバンド(L+Sバンド)の導入」(IoT_NTN_FDD_LS_band)は、NTN使用のために新しいLTEバンド(それぞれ253および254)を導入しました [source: 7]

RAN5

以前に導入されたNTN機能のUE適合性試験に関する作業が継続されました [source: 7]

CT(コアネットワークと端末) [source: 7]

「衛星アクセスフェーズ2のための5GC/EPC機能拡張」(5GSAT_Ph2)および「5GSATB(5GSにおける衛星バックホール)のCTx側面」(5GSATB)に関連するステージ3の作業が実施されました [source: 7]。WI「EPSにおけるNB-IoT/eMTC非地上ネットワークのCTx側面」(IoT_SAT_ARCH_EPS)は、REL-17 SA2 WIに対応するステージ3の変更を実現しました [source: 7]

3.4. リリース19:NTNの継続的な取り組みと将来の方向性

SA(サービスとシステムアスペクト) [source: 7]

SA1

SI「衛星アクセス - フェーズ3」(FS_5GSAT_Ph3)は、ストアアンドフォワード(S&F)運用、UE-衛星-UE通信、GNSS非依存運用、および測位機能拡張を含む、5G over Satelliteのさらなる機能拡張のためのユースケースと要件を検討します [source: 7]。規範的なステージ1要件は、WI「衛星アクセス フェーズ3」(5GSAT_Ph3)で規定されました [source: 7]

SA2

SI「5Gアーキテクチャにおける衛星コンポーネントの統合 フェーズ3」(FS_5GSAT_ARCH_Ph3)は、再生型ペイロードの汎用アーキテクチャ、ストアアンドフォワード衛星運用、および5GS向けのUE-衛星-UE通信の機能拡張を検討します [source: 7]

SA3

SI「5G衛星アクセス フェーズ2のセキュリティ側面に関する研究」(FS_5GSAT_SEC_Ph2)は、再生型ペイロード、ストアアンドフォワード衛星運用、および5GS向けのUE-衛星-UE通信の機能拡張のセキュリティとプライバシーの側面を重点的に検討します [source: 7]

SA5

SI「NTNフェーズ2の管理側面に関する研究」(FS_NTN_OAM_Ph2)は、衛星再生型ペイロードの管理機能、ストアアンドフォワードおよびUE-衛星-UE通信の管理要件、NTNシナリオのエンドツーエンド管理、およびNTN-TNとNTN-NTNのモビリティ連携の管理機能拡張を対象とします [source: 7]

SA6

SI「衛星アクセス対応5Gサービスのアプリケーションイネーブルメントに関する研究」(FS_5GSAT_APP)は、衛星アクセス用のアプリケーション層ソリューションと、ミッションクリティカルサービスにおける衛星通信の利用を調査します [source: 7]

RAN(無線アクセスネットワーク) [source: 7]

RAN2

WI「NRフェーズ3の非地上ネットワーク(NTN)」(NR_NTN_Ph3)は、様々な衛星ペイロードパラメータに対するDLカバレッジの機能拡張、FR1-NTNにおけるアップリンク容量/スループットの機能拡張、NR NTNを介したブロードキャストサービスのサービスエリアのシグナリング、再生型ペイロードのサポート、およびFR1-NTNバンドで動作するNR NTNを備えたRedCap UEのサポートを目指しています [source: 7]

RAN2

WI「インターネットオブシングス(IoT)フェーズ3の非地上ネットワーク(NTN)」(IoT_NTN_Ph3)は、フルeNBを再生型ペイロードとして使用したストアアンドフォワード衛星運用のサポート、およびアップリンク容量の機能拡張を含む、さらなる機能拡張に取り組みます [source: 7]

CT(コアネットワークと端末)

提供された資料には、リリース19に関するCTの具体的な合意事項や議論は詳述されていません。ただし、SAとRANの作業に基づいて、特に再生型ペイロードとUE-衛星間通信に関連する新機能をサポートするために、CTがコアネットワークプロトコルと端末の動作の適応に関与することが予想されます。

4. 主要な技術的洞察と進化

各リリースを通じて、NTNの主要な技術的側面は進化してきました。

ペイロードアーキテクチャ

初期リリース(リリース17、リリース18)では透過型(ベンドパイプ)ペイロードが中心でしたが、リリース19では再生型ペイロード(衛星にgNBを搭載)が導入されました [source: 12]。再生型ペイロードは、柔軟性、性能、カバレッジ、回復力、RTTにおいて透過型ペイロードよりも優れています [source: 12]。特に、衛星間リンク、宇宙空間でのパケットスイッチング、ストアアンドフォワード機能において利点があります [source: 12]

サポートされる周波数帯域

リリース17では、主に低周波数帯域(LバンドおよびSバンド)に焦点が当てられていましたが [source: 7]、リリース18では高周波数帯域(10 GHz超、Kaバンド)への拡張が行われ、将来のリリースでも計画されています [source: 7]。高周波数帯域は、減衰の増加や高度なアンテナ技術の必要性といった課題を伴いますが、容量増加の機会も提供します [source: 19]

遅延とドップラーシフトの処理

リリース17の初期ソリューションでは、GNSSと衛星エフェメリスを使用したUEの補償、再設計されたタイミング関係、および増加したHARQプロセスに焦点が当てられました [source: 7]。以降のリリースでは、様々なNTNシナリオと衛星軌道に合わせて、これらの側面をさらに最適化する取り組みが続けられています [source: 7]

モビリティ管理

リリース17の基本的なTN-NTNモビリティから、リリース18以降では、NTN-NTNモビリティやサービス継続性の機能拡張といった、より高度な概念へと進化しています [source: 4]。特にLEO衛星では、大きな伝搬遅延と頻繁なハンドオーバーが課題となっています [source: 4]

表1:3GPPリリースごとの主要なNTN機能(SA、RAN、CT) [source: 23]

リリース TSG 主要な機能/合意事項
17 SA サービス継続性、ローミング、ネットワーク選択、モビリティ、衛星アクセス(IoT含む)、遅延処理、衛星間リンク、QoS管理、マルチコネクティビティ、マルチキャスト/ブロードキャストなどのサービス要件を規定(TS 22.261)
SA 透過型ペイロードベースのLEO/GEOシナリオ、UE位置認識、地球固定トラッキングエリアに焦点を当てた5Gコアアーキテクチャの更新(TS 23.501, 23.502, 23.503)
SA 移動する非地上gNB用のSONコンセプト、パフォーマンス測定の適応、5Gネットワークリソースモデル(NRM)の拡張、負荷分散アプローチに関する推奨事項
RAN FR1における透過型ペイロードとFDDに焦点を当て、新しいバンドn255(Lバンド)とn256(Sバンド)を定義(TS 38.101-5, 38.108)
17 RAN タイミング、同期、HARQの機能拡張、エフェメリス情報と共通TAのブロードキャスト、UEによるドップラーシフトの事前補償
17 RAN ハンドオーバーコマンドへの衛星エフェメリス提供、TN-NTNモビリティのサポート、CHOの新しいトリガー条件(時間ベース、位置ベース)
17 RAN GEO/LEO衛星アクセス(透過型ペイロード)、LEO衛星アクセス(再生型ペイロード)に関する手順、NG-RANシグナリングの側面、NTNパラメータのO&M要件
17 RAN 衛星アクセスをサポートするNR UE/SANのFR1における最小RF/性能要件
17 RAN RAN2およびCT機能のUEテストを実施
17 CT 衛星アクセス用のPLMN選択の研究(TR 24.821)、UE位置決定、グローバル/共有PLMN IDの処理、国際エリアでのPLMN選択手順
18 SA 衛星バックホール用のQoS制御と課金に関する要件をTS 22.261に追加
SA 動的衛星バックホール、衛星エッジコンピューティング、ローカルデータスイッチングに関する議論、アーキテクチャ、手順、ポリシーの機能拡張
SA 衛星カバレッジ情報はO&MによってAMFにプロビジョニングされると結論付け
SA 衛星アクセス、バックホール、エッジコンピューティング、SSC間通信の課金、IoT NTNの管理に関する研究、関連する規範的な作業
18 RAN カバレッジ、ネットワーク検証UE位置、NTN-TN/NTN-NTNモビリティ、サービス継続性、10 GHz超のNR-NTN、IoT NTNのパフォーマンス、測定、モビリティ、不連続カバレッジ、RRMの機能拡張
RAN 特定のNR NTNバンドに30 MHzのチャネル帯域幅を追加、新しいFDD NTNバンドn254を指定、IoT NTN用の新しいLTEバンド(253、254)を導入
18 RAN 導入済みのNTN機能のUE適合性試験を継続
18 CT 衛星アクセスフェーズ2および衛星バックホールの5GC/EPC機能拡張に関連するステージ3の作業、REL-17 SA2 WIに対応するIoT NTNのEPSアーキテクチャに関するステージ3の変更
19 (計画) SA S&F運用、UE-衛星-UE通信、GNSS非依存運用、測位機能拡張を含む、さらなる機能拡張のためのユースケースと要件を検討
SA 再生型ペイロード、S&F、UE-衛星-UE通信の機能拡張を研究
SA 再生型ペイロード、S&F、UE-衛星-UE通信のセキュリティとプライバシーを重点的に検討
SA 再生型ペイロード、S&F、UE-衛星-UE通信の管理、エンドツーエンド管理、モビリティ連携を対象
19 (計画) SA 衛星アクセス用のアプリケーション層ソリューション、ミッションクリティカルサービスにおける衛星通信の利用を調査
19 (計画) RAN DLカバレッジとUL容量の機能拡張、ブロードキャストサービスのサービスエリアのシグナリング、再生型ペイロードのサポート、FR1におけるNR NTNを備えたRedCap UEのサポート
19 (計画) RAN 再生型ペイロードとしてのフルeNBによるS&F運用のサポート、アップリンク容量の機能拡張を含む、IoT NTNのさらなる機能拡張
19 (計画) CT SAおよびRANの作業に基づいて、特に再生型ペイロードとUE-衛星間通信に関連する新機能をサポートするために、コアネットワークプロトコルと端末の動作の適応に関与することが予想される

表2:3GPP NTNにおける透過型ペイロードと再生型ペイロードの比較 [source: 24] [source: 25]

特徴 透過型ペイロード 再生型ペイロード
アーキテクチャ 衛星は無線リピータとして機能、gNBは地上に配置 衛星に完全なgNBを搭載
処理能力 RFフィルタリング、周波数変換、増幅のみ 復調/復号、スイッチング/ルーティング、符号化/変調などのオンボード処理機能
主な利点 ペイロードの複雑さを抑え、早期展開が可能 柔軟性と性能の向上、グローバルカバレッジ、回復力の向上、RTTの短縮、高度な機能(S&Fなど)の基盤
導入リリース リリース17、リリース18 リリース19
潜在的な欠点 柔軟性と性能が限定的、衛星間リンクのサポートなし ペイロードの複雑さと消費電力のわずかな増加

5. 結論

3GPPにおけるNTNの標準化は、リリース14の初期検討から始まり、リリース17で最初の規範的な作業が行われ、リリース18で機能拡張と新機能が導入され、リリース19ではさらに高度なシナリオが検討されています。各リリースにおいて、SA、RAN、CTの各技術仕様グループは、NTNの様々な側面に取り組み、サービス要件の定義から、無線インターフェースの最適化、コアネットワークの適応、そして適合性試験の実施まで、包括的な標準化を進めてきました。特に、透過型ペイロードから再生型ペイロードへの進化、サポートされる周波数帯域の拡大、遅延とドップラーシフトの処理の改善、そしてモビリティ管理の高度化は、NTNがグローバルなモバイルエコシステムに統合され、広範なカバレッジと革新的なサービスを様々な分野でサポートするための重要な進展を示しています [source: 4]

引用文献